一人で会社を作ることは可能?手順、費用、社会保険の義務を解説

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一人で会社を作ることは可能?手順、費用、社会保険の義務を解説

「いつかは自分の力で事業を始めたい」と考えたとき、選択肢の一つとして「一人で会社を作ること」が思い浮かぶかもしれません。
しかし、会社設立と聞くと、手続きが複雑で何から手をつければ良いのか分からず、不安に感じてしまう方も多いのではないでしょうか。
特に一人ですべてをこなすとなると、そのハードルはさらに高く感じられるかもしれません。

今回は、一人で会社を設立しようと考えている方に向けて、具体的な手順や事前に準備・検討しておくべきことについてご紹介します。
一つひとつのステップを理解することで、会社設立への道のりがより明確になるはずです。

一人で会社を作る手順はどう進める?

一人で会社を設立する場合でも、基本的な流れは複数人で設立する場合と大きく変わりません。
事業の準備と並行して進める必要があるため、全体の流れを把握し、計画的に進めていきましょう。
ここでは、株式会社の設立を例に、登記完了後の手続きまでを3つのステップに分けて見ていきます。

会社の概要決定から定款認証まで進める

会社設立の第一歩は、会社の骨格となる基本事項を決めることから始まります。
具体的には、以下のような項目を決定します。

・会社名(商号)
・事業目的
・本店の所在地
・資本金の額
・設立日
・会計年度(決算期)

これらの基本事項は、次に作成する「定款(ていかん)」に記載する重要な内容です。
定款とは、会社の運営における基本的なルールを定めたもので、「会社の憲法」とも呼ばれます。
定款には必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」があり、一つでも漏れていると定款自体が無効になってしまうため注意が必要です。

会社の商号が決まったら、法務局に設立登記を申請する際に必要となる会社の実印を作成します。
このタイミングで、銀行口座開設に使う銀行印や、請求書などに押印する角印も一緒に作っておくと後の手続きがスムーズです。

定款が完成したら、株式会社の場合は公証役場で認証を受ける必要があります。
この認証手続きを経ることで、定款が正式なものとして認められます。
なお、合同会社を設立する場合は、定款の作成は必要ですが公証役場での認証は不要です。

資本金を払い込み登記申請を完了させる

定款の認証が無事に終わったら、次は資本金を払い込みます。
この時点ではまだ法人口座は開設できないため、発起人である自分自身の個人口座に、定めた資本金額を振り込みます。
このとき、誰がいくら振り込んだか分かるように、通帳のコピー(表紙、1ページ目、振込が記帳されたページ)を取っておきましょう。
このコピーは、後の登記申請で必要になります。

資本金の払い込みが完了したら、いよいよ法務局で会社の設立登記申請を行います。
設立登記申請書をはじめ、認証済みの定款や資本金の払込証明書など、必要な書類をすべて揃えて提出します。
申請書類に不備がなければ、提出から1週間~10日ほどで登記が完了し、晴れて会社が設立されたことになります。
この登記申請日が、会社の設立日となります。

登記完了後に税務・社会保険の届出を行う

会社の設立登記が完了しても、手続きはまだ終わりではありません。
事業を開始するためには、税務署や年金事務所などへの各種届出が必要です。

まず、税務署には「法人設立届出書」を提出します。
もし青色申告を希望する場合は、あわせて「青色申告の承認申請書」も提出しましょう。
節税メリットの大きい青色申告ですが、提出期限が定められているため、登記が完了したら速やかに行動することが大切です。

次に、年金事務所で健康保険や厚生年金保険といった社会保険の加入手続きを行います。
たとえ社長一人だけの会社であっても、法人は社会保険への加入が義務付けられています。
これらの手続きは提出期限が短いものもあるため、事前に必要書類を確認し、計画的に進めるようにしましょう。

会社設立前に何を準備・検討すべき?

会社設立の手続きを進める前に、いくつか知っておくべき重要なポイントがあります。
後から「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、費用面や制度面での違いをしっかりと理解しておきましょう。

設立費用と資本金の目安を把握する

会社設立には、法定費用と呼ばれるコストがかかります。
主な費用は以下の通りです。

・登録免許税
株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円
・定款認証手数料(株式会社のみ)
3万円~5万円
・定款に貼る収入印紙代
4万円(電子定款の場合は不要)

すべて合わせると、株式会社の場合は約20万円以上、合同会社の場合は約10万円以上が必要となります。
特に、収入印紙代は電子定款という方法を利用すれば節約できるため、コストを抑えたい方は検討してみると良いでしょう。

また、資本金は法律上1円から設立可能ですが、あまりに少額だと会社の信用力に影響したり、すぐに資金が底をついてしまったりする可能性があります。
一つの目安として、「事業の初期費用+3ヶ月程度の運転資金」を準備しておくと安心です。

個人事業主との違いを理解する

一人で事業を行う点では、一人会社も個人事業主も同じですが、両者には明確な違いがあります。

・社会的信用度
一般的に、個人事業主よりも法人の方が社会的信用度は高くなります。
取引先によっては法人でなければ契約できないケースや、融資を受ける際に有利になることがあります。

・税金
個人事業主には所得に応じて税率が上がる「所得税」が課されるのに対し、法人には一定の税率である「法人税」が課されます。
所得が一定額を超えると、法人の方が税負担を抑えられる可能性があります。
ただし、法人は赤字であっても法人住民税(均等割)の支払いが必要です。

・責任の範囲
事業で負債を抱えた場合、個人事業主は個人の資産すべてで責任を負う「無限責任」です。
一方、株式会社や合同会社は、出資した範囲内でのみ責任を負う「有限責任」となり、個人の資産は守られます。

社会保険への加入義務を認識する

個人事業主との最も大きな違いの一つが、社会保険への加入義務です。
前述の通り、社長一人だけの会社であっても、法人は健康保険と厚生年金保険に加入しなければなりません。

これまで国民健康保険や国民年金に加入していた方も、法人化に伴い切り替えの手続きが必要です。
社会保険料は会社と個人で半分ずつ負担しますが、一人社長の場合は実質的に全額を自分で負担することになります。
この点は、会社の資金繰りを考える上で非常に重要なポイントとなるため、必ず念頭に置いておきましょう。

まとめ

一人で会社を設立することは、決して不可能なことではありません。
会社の基本事項を決め、定款を作成・認証し、資本金を払い込んで登記申請を行うという手順を一つずつ着実に進めていくことが大切です。

ただし、手続きを始める前には、設立にかかる費用や、個人事業主とは異なる社会的信用、税金、責任の範囲、そして社会保険の加入義務といった点を十分に理解しておく必要があります。
これらの知識を持つことで、ご自身の事業にとって最適な選択ができるはずです。
会社設立は新たなスタートラインです。
この記事が、その一歩を踏み出すための助けとなれば幸いです。

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