事業が軌道に乗り、さらなる成長を目指す個人事業主にとって、法人化は次なるステージへの重要な選択肢となります。
事業の規模拡大や社会的な信用の向上、税制上のメリットなど、法人化によって得られる恩恵は多岐にわたります。
しかし、その一方で、会社設立に伴う複雑な手続きや、法人化後に必要となる新たな業務への対応も無視できません。
新しい法人格のもとで事業を円滑に進めるためには、どのようなステップを踏む必要があるのか、その全体像を把握することが不可欠です。
法人化の会社設立にはどんな手続きが必要か
個人事業主が法人化する際、まず必要となるのが会社設立の手続きです。
この手続きには、いくつかの段階と必要な作業があります。
会社形態の決定
法人化にあたり、最初に決めるべきはどのような会社形態にするかです。
主な会社形態には、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社などがあります。
中でも株式会社と合同会社が一般的であり、それぞれに特徴やメリット・デメリットが異なります。
事業の規模や将来的な展望、出資者の責任範囲などを考慮し、自社に最適な形態を選択することが重要です。
定款作成と資本金払い込み
次に、会社の基本的なルールを定めた「定款」を作成します。
定款には、会社の商号(名称)、事業目的、本店所在地、役員構成、資本金額、決算日といった事項を記載します。
株式会社の場合は、作成した定款を公証役場で認証してもらう手続きが必要です。
定款の作成と認証が済んだら、定められた資本金を、発起人個人の銀行口座へ払い込みます。
この資本金の払い込みは、会社設立登記の際に必要となる重要な証拠となります。
登記申請
会社設立の最終段階は、法務局への設立登記申請です。
必要書類一式を準備し、管轄の法務局に提出します。
登記申請が受理され、登記が完了した日が会社の設立日となります。
この登記完了をもって、法的な会社としての設立が認められます。

法人成りとは何?なぜ行う?
法人化を検討する上で、まず「法人成り」とは何か、そしてなぜ法人化を行うのかを理解することが、その後の手続きや意思決定の指針となります。
個人事業主から法人への移行
法人成りとは、個人事業主が事業を法人格に移すことを指します。
具体的には、個人事業主としての事業を一旦廃業し、新たに会社を設立した上で、その法人に事業を引き継ぐという形になります。
個人事業主が、その事業を法人に「成る」というイメージです。
法人化のメリット・デメリット
法人化には、事業の成長を後押しする様々なメリットがあります。
例えば、社会的な信用度が高まり、取引先からの信頼を得やすくなることや、個人事業主の時よりも税制上有利になるケースが多いことなどが挙げられます。
また、経営者の責任範囲が有限になるという点も、リスク管理の観点から重要です。
一方で、デメリットも存在します。
会社設立には一定の費用がかかり、法人を維持するためにも年間を通じたコストや、個人事業主の時よりも増える会計・事務手続きの負担などが挙げられます。
また、赤字の場合でも法人住民税や法人事業税の均等割などが課される場合があるなど、税務面での注意点もあります。
法人化の判断タイミング
法人化を判断するタイミングは、事業の状況によって異なりますが、一般的には個人の所得が一定額を超え、税率が高くなる頃が目安とされます。
具体的には、所得が800万円を超えたあたりから、法人税の方が所得税よりも有利になるケースが増えると言われています。
また、事業の拡大が見込まれる場合や、外部からの資金調達を検討している場合なども、法人化を検討する良い機会となります。

法人化後にやるべき手続き
会社設立の登記が完了し、法人格を取得した後も、事業を円滑に進めるためにはいくつかの重要な手続きが必要です。
個人事業の廃業手続き
法人化するということは、個人事業主としての活動を終了させることを意味します。
そのため、税務署に対して個人事業の廃業届出書を提出する手続きが必要となります。
この届出は、原則として事業を廃止してから1ヶ月以内に行う必要があります。
法人設立届出書の提出
会社を設立したことを、行政機関に知らせるための手続きです。
税務署だけでなく、事業所の所在地を管轄する都道府県税事務所や市区町村役場にも、法人設立届出書を提出しなければなりません。
これらの届出は、法人設立から原則として2ヶ月以内に行うことが求められます。
銀行口座開設と名義変更
法人として事業を行う上で、法人口座の開設は不可欠です。
個人用の口座とは別に、法人のための銀行口座を開設し、事業の収入や支出を明確に管理できるようにします。
また、これまで個人事業主名義で契約していた事務所や店舗、各種サービスなどの契約についても、法人名義への変更手続きを進める必要があります。
これにより、事業における信頼性を高め、公私を明確に分けることができます。
税務・会計以外の必要な手続き(労務・登記など)
会社設立後には、税務や会計以外の専門的な手続きも多数発生します。
具体的には、労働保険や社会保険への加入手続き、役員報酬の決定、個人事業の資産や負債の引継ぎ、登記事項証明書や印鑑証明書の取得などです。
これらの手続きは、税理士の専門分野外のものが含まれますが、司法書士、社会保険労務士、行政書士などとのネットワークを活用したワンストップの支援体制がある専門家に依頼することで、複数の専門家を探す手間を省き、安心して事業運営に集中できます 。
まとめ
個人事業主から法人への移行である法人成りは、事業の成長段階で検討される重要なステップです。
会社形態の決定から登記申請までの設立手続き、そして法人化後の廃業手続きや各種届出、口座開設など、多岐にわたるプロセスを正確に実行することが求められます。
法人化のメリット・デメリットを理解し、適切なタイミングでこれらの手続きを進めることで、新たな法人格のもとでの事業展開を円滑に進めることができるでしょう。
特に、法人化後は会計・事務手続きの負担が増大するため、AIやDXを駆使した経理業務の効率化と、タイムリーな経営判断を可能にする最新の会計体制の構築が重要となります 。